婚約者は野獣


「んで、なんでまるちぃは変装中?」

内田さんに唐突に振られて


「・・・へっ?」


驚く間も無く


「あ、私も気付いてたよ」


堂本さんにも指摘される


「・・・そんなに、分かりやすい?」


「あー、んー、少なくとも
私ら二人は直ぐ分かったけど」


お箸を咥えたままニッコリ笑う内田さんは
カメラを向けたくなる程可愛い


「うんうん」


それに相槌を打つ堂本さんも
このまま人形が出来るんじゃないかって想像すらしてしまう


「色々ね、大人の事情っての」


「メガネは本物じゃん」


「うん、視力極端に悪くってね
夏休みを利用してレーシック手術受けようと思ってるんだ」


「へぇ、まるちぃったら大胆」


「・・・は?」


「だって〜、そしたら変装終了でしょう?」


「いや・・・それはどうかな?」


「そんな大人の事情抱えてんの?
ものすごーーーく訳有り?」


興味津々の内田さんに


「ん・・・と、まぁ、色々」


曖昧な返事しか出来なくて


「ふ〜ん、じゃあそういうことにしといてあげる〜」


深く追求されることなく
緩い女子トークは別の話題へと移った


この子達は・・・
色々分かってて話を逸らしてくれた


そのことが分かって胸が熱くなる

それに感謝を込めて


「今日ね〜」


保冷剤専用の冷蔵庫を開いて
紙パックのカフェオレを取り出した


「食後のコーヒープレゼント」


二人の前に置くと


「「ワァ、まるちぃありがとう」」


可愛い声が綺麗にハモった


< 87 / 171 >

この作品をシェア

pagetop