幻惑
「結花里。大丈夫?」

私のスーツケースを翼の車に積みながら、私に聞く。
 
「遅くなっちゃって。ごめんね。」

そう言って、車に乗ると 私は翼に抱き付く。
 
「結花里。ありがとう。結花里。」

私の頭を撫でながら、翼は繰り返す。
 
「今日から、よろしくお願いします。」

翼の胸から顔を上げて、私は言う。

翼は、ニコっと微笑んで
 
「こちらこそ。」と言った。
 


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