幻惑
「翼君がパパの所に来ることは、相当の勇気だったよね。だからパパは、翼君を信用できたんだよ、結花里。」

私は、手で口を覆って嗚咽を堪えた。

どこまでも守られている自分の幸せを、心から感謝していた。
 
「パパは結花里が可愛い。翼君に負けないくらいね。結花里を幸せにしたい気持ちも、翼君に負けないよ。」

そう言って、父は翼を見る。翼は苦笑して頷いた。

「パパは、喜んで力になるよ。パパにできることならね。でも、翼君にしかできないこともあるだろう。それは翼君に任せるよ。結花里の為だから。」


私は、もう声を抑えることができなかった。

翼の膝に顔を伏せて号泣してしまう。

そっと私の背中を撫でる翼。
 

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