幻惑
「うん。パパも、あの時の私を見たから、力になってくれたのかな。」


家に戻った私は、本当に憔悴していたから。
 
「辛い思いさせて、ごめんね。」

優しく繰り返す翼に、
 
「私も。私も、翼君に辛い思いさせてしまったから。ごめんね。」

同じように謝る私を、翼は愛おし気に見つめる。
 
「一番辛いことを、乗り越えたから。これからは、楽しいことばかりだよ。」

翼の言葉に私は頷く。

「これからは、どんなことでも相談し合って、一緒に乗り越えようね。」

と言って、私は翼の胸に顔を埋める。

気怠い甘さと、安心感に包まれて。

私はいつの間にか、眠りに落ちていた。
 

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