幻惑
「翼君、今日は休みだろう。後でママと三人で、見て来なさい。」

父の言葉を、母も笑顔で聞いている。
 
「パパ。どういう事?」

私が聞き返すと
 

「西町に、良い物件があったから、買うことにしたよ。二人の新居にね。」

と父は事も無げに言う。

私も翼も、あっけに取られて何も言えない。
 
「西町なら、ここから近いし。翼君の職場に通うのも便利だろう。」

父は、私たちの結婚を認め、応援しようとしている。
 
「家を見た後で、備品も選ぶから。今日は忙しいわよ。」

と笑う母。
 
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