幻惑
木曜日、一ヵ月振りに私は、『Shic』に行った。

翼は私をいつも通りに迎える。
 
「今日は、どうしますか。」

鏡越しに私を見つめて聞く翼。

私の髪を梳く翼の指は、耳の後ろを滑り、優しく うなじを撫でる。
 
「いつもと同じで。」

と言って、私は翼の目を見る。

責めるように。熱く潤んでしまう瞳で。
 
「トリートメントは、どうしますか。今、キャンペーンで、頭皮マッサージ付きのトリートメントをお勧めしているんですよ。」

翼の言葉に
 
「じゃ、それ、お願いします。」と私は答えた。
 
翼に導かれ、シャンプー台に移動する。

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