幻惑
「結花里、ごめんね。中々、妻と話せなくて。」

翼は、すまなそうに私に言う。
 
仕事以外の時間の、ほとんどを私と過ごしている翼。

奥さんと話す時間を、作れるわけがない。
 
「ううん。いいの。翼君、こんなに私と一緒にいってくれるもん。」

と私は答える。
 
奥さんの存在は、気になるけれど。

奥さんよりも 翼を独占している満足感が、私にはあった。
 
「でも、妻に話せば、もっと色々な所に、結花里と出かけられるのに。」

翼は、切ない目で私を見る。

私が翼を責めないから。

翼は、一層深い愛で私を包む。
 
「ありがとう。でも、気にしないで。私、今のままでも、すごく幸せだよ。」

と言う。
 

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