【完結】その口止め料は高すぎますっ
「関係ない話だろ」と直斗さんがつぶやいて、「調子に乗るとしゃべりすぎちゃうのよね」とお母様が受けて、「手術が終わったら、母さんまでテンション上がっちゃってるんだな」とお父様がかぶせるという小原家の連携プレーで、気まずい雰囲気は回避されたけれど。

うまく返せなくて、気を使わせてしまう自分がもどかしい。

帰宅後、さっそくお茶とともにいただいたケーキは、洋酒に漬けられたドライフルーツがたっぷり練り込まれていて、生地の口当たりはしっとりと、それはもううっとりする美味しさだった。

これが引き出物に入っていたら、感嘆のため息とともにどこのお店か調べるだろう。
そして店舗がもうないということを知って、残念に思いながらケーキを大切に味わうはずだ。

ひょっとしてお母様が今からシェフに「もしかしたら、今度次男の…」なんて話をしていたら。
申し訳ないどころじゃない。

やっぱり嘘は罪深い。周りを巻き込んで、どんどん話が大きくなってしまう。
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