幼なじみの彼とわたし

side 遥平

年が明けて、亜衣の家に行く回数が増えて。
結婚したいという気持ちが日に日に大きくなっていた。

でも、泊まる回数が増えただけで、関係性は幼馴染みのときとあまりかわらない。
恋人のような空気に持っていくのも苦戦中だ。


みんなの前、とくに亜衣の前ではカッコいいところを見せようと堂々とした男を演じてはいるが、実はビビりだということをひしひしと痛感する毎日。


思い返せば、中3の卒業式の日。
勢いで亜衣にキスをしたけど、そのときもそう。

亜衣のことは好きだったけど、フラれたら…、幼馴染みでもいられなくなったら…、なんて思うと、告白なんてする勇気もなくて。
そんなとき、亜衣が『チュッてして』なんて言うから、ここぞとばかりにキスができたんだし。
口にしたのは、俺にしては頑張ったところだけど、そのあとに『好き』の言葉も伝えることができなかった。


付き合うようになったときも、亜衣から気持ちを伝えてくれたから俺も伝えたようなもんだ。


亜衣が何も言ってくれなかったら、亜衣のファーストキスも俺じゃなかっただろうし、未だに幼馴染みとして近くにいるだけだっただろう。


はぁ。
ため息しかでない。


1月も下旬にさしかかるころ、悠希から誘いの電話があった。

いつもの轟で待ち合わせる。


「乾杯」


ビールで乾杯したあと世間話をする。


「で、どうなの?亜衣紗ちゃんとは」

「どうって、亜衣紗が千尋に言ってるのを聞いてるんだろ?」

「うん、まぁな」


じゃあ聞かなくてもよくね?
ビールをまた一口飲む。

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