幼なじみの彼とわたし
「え、亜衣紗ちゃん?」
「…あ」


たまたまお友だちと飲みに来ていたらしい森田さんだ。


しかも、こっちは女二人で顔グショグショにして泣きながらビールを飲んでいる、という光景。

森田さんはぎょっとした表情になっている。


「あ、ごめんなさい。こんな状況で」

慌てておしぼりを顔におしつけて、涙をぬぐって笑顔を作ってみる。


「いや、こっちこそごめん。こんなタイミングで通りかかって。トイレに行こうと思ったんだけど」

森田さんは全然悪くないのに申し訳なさそうにしている。


「いえ、全然。どうぞ気にしないで行ってください」

手をどうぞどうぞと動かしてお手洗いに行ってもらう。


トイレから戻ったらしい森田さんは、友達を連れてわたしたちのテーブルにやって来た。


「一緒に飲もう?人数多い方が楽しいだろ?今日は二人の分も奢るからさ」


だって。
そして、さっさとメンバー紹介をし始めた。


「こいつ、守本の結婚式にも来てた、藤木。大学が一緒だから亜衣紗ちゃんもタメだな」


そこまで言うと、藤木さんは「藤木です。よろしくね」とにこっと笑う。

背はそれほど高くはないけど眼鏡をかけていてクールそうな印象だ。
モーリーは体育会系なかんじだし、森田さんと藤木さん、共通点がなかなかなさそうだなぁと思いながらふたりを眺める。


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