お前が好きだなんて俺はバカだな
空が赤く黄昏てきた。

私の思いも、そんな不完全な感じで滲むばかりだ。

「先輩、どうして断らなかったんですか?」

「会長の言うことも半分は間違ってないんだよ。実際に俺たちがいるといないのとでは、生徒の夏休み中の過ごし方も変わってくる。」

「でも、そんなの、先生とか、頼りなければ、地域の人とか、警察とかに任せればいいじゃないですか。
夏休み中まで学校って組織にこだわらなくたっていいでしょう。」

「俺もそうは思うけど...。」

「先輩は会長に甘すぎるんですよ。
少しは、会長に向かってはっきりと意見したっていいんじゃありませんか?」

先輩はため息をついた。

「仕方ないだろ。意見言ってもきかないのは、俺の方がよく分かってるんだよ。」

「...分かってるって、会長のこと、ですか。」

「そうだ。」

「...会長のこと、やっぱり詳しいんですね。」

「別に詳しいってわけじゃ...。」

「会長も、そうです。
先輩のこと、よく知ってます。」

「それは、経験上の話だろ。
嫌でも中学から顔なじみなんだから、知りたくなくても知ることになるんだよ。」

「こっちは、知りたくても知れないことが沢山あるのに...。」

「なんだよ、それ。」

「私、先輩が会長のこと守ってたなんてこと知りませんでした。」

「守ってたなんて大袈裟だな。
ただ会長の喧嘩に巻き込まれただけだ。」

「本当にそれだけなんですか?
少なくとも会長や皆は守ってたって思ってますよ。」

「...そんなの、今のこととなんの関係があるんだよ。」

「関係があるとか、ないとかそういう話じゃ...。」

「とにかく、決まったことなんだから今さらグチグチ言ったって仕方ないだろ。」

「仕方ないって...。
せっかくの夏休みなのに。」

「そんなに文句があるなら、お前が会長に意見すれば良かっただろ。
お前だって黙認してたんだから、賛成してたことになるんだよ。」

「わ...私のせいだっていうんですか!」

「別にそんなこと言ってないだろ...。」

「だって、そういう言い方じゃないですか。先輩だって言えなかったくせに。
ずっと会長と一緒にいたくせに、ちゃんと意見言えないなんてとんだ臆病ですよ。」

「なんだよ、その言い方。
そうやって、過去のことほじくり返したり、皆で決めたことに対して陰で文句言ったりするのだって、お前の自分勝手なんじゃないのか。」

「自分勝手は先輩でしょ!
どうせ会長や皆の好感度得るために毎回引き受けてるだけなんじゃないんですか?」

「知ったようなこと言うなよ。大体、なんで俺がそんなことする必要...。」

「どうせ私は知らないですよ。先輩のことなんて。
本当は会長の方がいいって思ってるのかも分からないですしね。」

「はあ?
どうしてまたそういう話になるんだよ...。
違うって何度も言ってるだろ。」

「違うならどうして私のこともっと考えてくれないんですか!
会長のことばっかりじゃないですか!」

「いちいち決めつけるなよ、この分からず屋!」

「分からず屋は先輩じゃないですか!
先輩のバカ!」

「...もういい。
お前と話してると疲れる。」

「あーそうですか。
会長とか、可愛い女の子とお話ししてた方がよほど楽しいですもんね。
...そんなのこっちから願い下げですよ。
さようなら。」

私は、先輩を置いて、走り去るようにその場を後にした。

先輩が何か言ってた気がするけど、そんなこと、耳に入らなかった。

頭痛がする。

もう、これで終わりなのかな...。
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