カッコウ
「みどり、就職したらここに住めば?」

年が明けてしばらくすると、孝明は言う。
 
「ここ、独身寮でしょう。会社に見つかったらまずいよ。」

孝明の魅力的な提案にみどりは躊躇する。

孝明と暮らせば、みどりの少ない収入でも家を出られる。

でも、もう茂樹とは会えないだろう。
 
「入籍するまでは独身だから。そういう人結構いるよ。」

孝明の言葉に、みどりは照れた笑顔を見せる。

いい機会かもしれない。今度こそ、本当に茂樹と別れよう。

いつまでも、こんなことは続かない。
 
「本当に大丈夫?」

みどりが聞き返すと、孝明は笑顔で頷く。そして、
 
「でも、みどりのご両親にちゃんと言わないとね。」

少し照れて言う孝明。

孝明の真剣な言葉がみどりをときめかせる。

孝明はみどりとの結婚を考えている。
 
「それ、プロポーズ?」

孝明を甘く見上げてみどりが聞くと、
 
「もっと稼げるようになったら、ちゃんと言うよ。」

孝明の言葉にみどりも頷く。
 
「ありがとう。」と言って。
 
都市銀行に勤務する孝明。

結婚できたら最高だとみどりは思う。

収入も多く、社会的な信用もある。しかも孝明は穏やかで優しい性格だから。
孝明がみどりとの結婚を考えていると知って、みどりは胸が熱くなる。

茂樹との密会を続けている場合ではない。孝明を手放したくないから。

もう茂樹とは会わない、とみどりは一人決心をしていた。
 
 
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