カッコウ
銀行員は転勤が多い。

入行して6年目の孝明も、そろそろ転勤だと思っていた。

ただ少し遠いから。

孝明もみどりも戸惑っていた。

優秀な行員ほど色々な地方を歩くという。

孝明にとって、むしろ嬉しい転勤だから。
 

「やっぱり私も一緒に行くよ。」

みどりは孝明を見る。

孝明と離れることが怖くて。

今までみどりは、孝明に与えられるばかりで何もしていない。

やっとみどりから孝明に与えることができると思ったのに。

だから離れたくない。
 
「知らない土地で大翔抱えて、何かあったら困るでしょう。俺は大丈夫だから。いまは元気な子供を産むことが一番だからね。」

やっぱり孝明は優しい。
 
「孝ちゃん。」

みどりは涙汲んで孝明を見つめる。

まだみどりは信じていた。

みどりの心さえ晴れれば、幸せな生活が続くと。
 
 

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