カッコウ Ⅱ
「由美ちゃん。俺、ちょっと駅に行ってくるね。」

夕方、学校から戻った大翔が言う。
 
「後でよければ、乗せて行くよ。」

夕食の仕度をしていた由美が答えると、
 
「ううん。お母さん降りて来たら、話してくるよ。」

大翔の言葉に由美は驚いて、
 
「ヒロ君、大丈夫?無理しなくていいんだよ。」と言う。
 
「大丈夫だよ。頭にきたらお母さんをビンタしてくるよ。」

と大翔は寂しそうに笑った。



もうすぐ夏休みも終わる。

前を向いた大翔の強さに由美は驚いていた。
 
大翔は家でなく、外でみどりと話そうとしている。

祖父母の為に。そして何も知らない悠翔の為に。

大翔の思いやりに由美は胸を熱くした。
 


「辛かったら、すぐに帰っておいでね。」

と言う由美に手を振って、大翔は自転車を漕いで行った。
 
 
< 123 / 145 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop