カッコウ Ⅱ
大翔 6
「ヒロ、本当にお父さんに会いたいか?」

孝明との電話を切って、リビングに戻った哲也は大翔に聞いた。
 
「うん。」大翔は寂しそうに俯く。
 

「ヒロのお父さん、再婚して、今は川崎に住んでいるって。女の子が二人いるらしい。それで今度の日曜日、お父さんに会えるよ。」

哲也が一気に話すと、大翔は驚いた顔で
 
「うそ。」と一言呟いた。
 
「お父さんの家に来てほしいっていうんだけど。ヒロ、行くか?」

哲也の言葉に大翔は驚いた顔で、
 

「行く。でもどうして哲ちゃん、お父さんの居場所わかったの?」

大翔はまだ信じられない顔をしている。
 
「お兄さんの連絡先、ずっと消していなくて。繋がるかどうか、一か八かで連絡してみたんだ。お父さん、ヒロに会いたがっていたよ。」

哲也は少し躊躇したけれど、本当のことを大翔に話す。
 
「嘘でしょう。」大翔は呟く。
 
「お父さん達、離婚した時、ヒロ達とは会わないって約束だったんだ。ヒロ達を混乱させるからって。」

哲也の言葉に大翔は目を見張る。
 
大翔がずっと知りたいと思っていた、孝明が会いに来ない理由。

孝明も大翔に会うことを我慢していたと思うことは、大翔の心の霧を晴らした。

哲也は大翔の目が明るく輝いたことに気付いた。
 
「ヒロ、これ、お父さんとの待ち合せ場所だよ。少し遠いけど、一人で行けるか?」

哲也は、孝明が送ってくれた場所をメモして大翔に渡す。
 
「大丈夫だよ。俺をいくつだと思っているの。」

大翔の声は弾んでいた。
 
「迷わないように、よく調べておけよ。」

と言う哲也に
 
「哲ちゃん、ありがとう。」

と大翔は言い、リビングを出て行った。
 


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