太陽 ~出会い~

孤独と涙

私は部屋を出て、施設長の部屋へ向かった。

―――コンコン…

「はぁい?」ドアの向こうから声がした。

「施設長…私、です。話があります。」

「唯ちゃん?いいわよ、入りなさい」

私はドアをゆっくり静かに開いた。そこには、まだスッピンの施設長がいた。ここ10年間、私は施設にずっといたというのにスッピンを見たのは初めてだった。

「あ、適当に座って?」

ちなみに、施設長の部屋に入ったのも、部屋のドアを叩いたのも、初めてだ。

そして、自分から話をもちかけるのも。

「はい…。」

施設長は適当に身なりを整え、こちらを向いて、笑顔で言った。

「で?話って…なぁに?唯ちゃんからの話なんて初めてね…」

「あは…そうですね。あの…聞きたいことがあって。」

「うん…何?」

「あの、日向って、何処の施設に移ったんですか?」

「日向君は、…ごめんなさい。“アイツには言わないで”って…唯ちゃんのことだって、わかったわ。だから…ごめんね?教えられないわ」

「そんな…」また泣きそうになった。何か、悔しくて。

「あの子………日向君、凄いわね」

「日向…が?何で?」

「ええ。だって唯ちゃんを、こんなに変えてくれたんだもの。」

施設長は優しく微笑んだ。私…変わった?日向が私を変えてくれたの?

「私…変わりましたか?」

「うん、すっごい変わった。」

「…そうですか…じゃあ、じゃあもっと、もっと日向といたら、もっといい方向に変わっていくんじゃ…?!」

「それは違うわ」

「どうして…」

「だって、それは唯ちゃんがワガママになる。甘えることになる。だったら唯ちゃんが何も成長しないもの。そのことを考えて日向君は、行先を言うなって言ったんじゃないかな」

「そ…か…日向は考え方が大人だね」

「そうかしら?あの子はまだまだ子供よ」

「何で?」

「ん~…、それは自分で考えてみなさい?考えて答えが出て、唯ちゃんは一歩大人に近づくのよ」

「ふぅ~ん…そうですね…!わかりました。」

「…頑張って」

「はい…!!」

私は力強く答えた。
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