ナルシス
最初は少しの時間、お茶を飲んで話すだけだったのに。

若くて裕福なママ達は派手に遊び歩く。

光子も一緒に。夕璃一人を留守番させて。

必要のない外出なのに。



その頃の光子もまた、ぎりぎりの所で堪えていたから。
 


徹に全く求められないことは、まだ20代の光子を打ちのめしていた。

何故、徹は抱いてくれないのだろう。

もう魅力がないのか。

徹は他に好きな人ができたのか。

自分と夕璃は捨てられるのかもしれない。
 


毎日、そんな事ばかり考えて心が破裂しそうだった。

広い洋館に夕璃と二人。

どんなに夕璃が可愛くても光子は憔悴していく。

徹に愛されている自信がなかったから。
 
 
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