保健室で寝ていたら、爽やかモテ男子に甘く迫られちゃいました。

「俺、郁田さんのこともっと知りたいな」

「……別に知らなくていいからっ」

そう言えば、なにがおかしいのか「ハハッ」と笑ってから私にふたたび袋に入ったパンを見せた。

ゴクリ。
正直、お腹ペコペコだ。

体調悪くて朝は食べられなかったし。

「どれがいい?」

「……じゃあ、メロンパンで」

食欲に負けて遠慮がちに答えれば、満足そうに「はいどうぞ」と言われて、それがまた気に食わない。

「郁田さんは首が弱くてメロンパンが好き、っと」

「ちょっと!何してるの!」

スマホを取り出して何やら話しながら画面に打ち込む夏目くんに瞬時に突っ込めば、

「ただのメモだよ。たくさん食べて体力つけて。じゃないと俺の相手なんてできないよ」

「だから相手なんてしないからっ!」

本当に話が通じないったらありゃしない!

さっさと食べてここから出て行こう、そう思っていたら、

「大丈夫、その気にさせるから」

目の前の彼は、何かを企むような笑みを浮かべてそういった。
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