Bitter Sweet

「よし、準々決勝行くぞ」


「「「「「おう!!!!!」」」」


2年のキャプテンが気合を入れる。


咲良ちゃんは…


クレープ食べてるし!


可愛いから許す。


「ピーーーッ」


相手の高校走るの早くね、全然ディフェンスできない。


でも、ボールをなんとか奪ってシュート。


はい決まった。


ドリブルは細かく、そしてシュートは大胆に。


その繰り返し。


結果、71-30。


準決勝も勝った。


でも、正直体力が限界になってきた。


準決勝の時に足を挫いてスプレーで応急処置したけど、結構痛い。


「蓮斗、大丈夫か?」


「市川先生、大丈夫です、第一ピリオドから出ます」


「そうか」


「決勝相手の光が丘高校は去年陽の川から県大会も新人戦も勝った高校なんだ、だから絶対負けない気持ちで突っ込んでいけよ」


「わかりました」


よし、行くか。


「ピーーーッ」


第一ピリオド。


たくさん人がいる。決勝戦だからか視線が集まる。


咲良ちゃんがどこにいるかわからないほどに。


でも、関係者席にいた…親父。


なんでいるんだよ。


まさか咲良ちゃんと話した所を見られていないよな?


いや、羽柴先生いたから大丈夫なはず。


ボールを追いながらいろんなことを考える。


あっという間の10分間。

4-11


「蓮斗、第2から誠と変われ。」


「俺やれます」


「これは顧問が判断したから、足を無理してはいけないからな。一旦休め」


「わかりました。」


第2ピリオド。


2年の誠先輩、めっちゃ機敏だしシュートがどんどん決まる。俺が出る番はもう終わったと思いながら椅子に座る。そして、咲良ちゃんに申し訳ない気持ちと足の痛みが増す。


あっという間に第4ピリオド。


40-43


あと3点で逆転。


「誠はそのままで、大知と蓮斗がチェンジ!蓮斗と誠で一気に攻めろ」


「「わかりました」」


咲良ちゃんが見たいんだけど、ラスト10分は見れないから…


あ、いた。


咲良ちゃんに手を振りたいけどあいつがいるから無理だ。


見るだけにして第4ピリオドスタート。


相手の選手は1度も選手交換してない。


だからか、オフェンスしてる選手の足に力がない。


もしかして、足痛めてる?湿布しているし。


俺は力を出しまくるぞ。


光が丘の6番からボールを奪ってシュート。


また、光が丘の1番から奪ってシュート。


そして、誠先輩が12番から奪って3ポイントシュート。


「ピピーッ」


「60-52」


「「「「「「よっしゃー!!!」」」」」


めっちゃ嬉しい。無理してよかったけど足やばい。


閉会式はなんとか出た。まさかのうちの親父が大会名誉会長になってる。なんでだよ。


トロフィーを受け取って、俺は最優先選手に選ばれた。


そして、閉会式終了後に記念写真を撮って、部室に帰ろうとした。


「蓮斗」


「なんだよ」


「久しぶりだな」


「なんでここにいんだよ」


「名誉会長になったから」


「へー、36歳のくせに、いろんなものを犠牲にしてスピード出世か」


「蓮斗」


「俺はもう親父を恨んでない、恨んだら俺がもっと苦しくなるから、それにお母さんが恨んでないんだよ、こんなやつをお母さんは本気で愛していたんだから、恨めねえよ」


「俺は本当に申し訳ないと思っている。だから蓮斗が受け入れたものは全て俺も受け入れるから」


「なんだよそれ…」


「あれ?これはこれは木崎先生と羽柴先生じゃないか!」


まさかの遭遇。まぁでも学校で同じ場所にいるからそう考えればいいっか。


「こんにちは校長先生」


「木崎先生と羽柴先生はなぜこちらに?」


「たまたま2人休みだったので私が咲良を誘ってここに来たんです〜」


「そっか、蓮斗の活躍を見てくれてありがとう」


「蓬莱くん、最優秀選手おめでとう!」


「蓬莱くんおめでとう!」


なに親父ぶってんだ。咲良ちゃんには全て話したぞ。まぁでも周りからは俺の父親兼校長だからな。いい親父演じてても構わない。親父の中身を周りに晒すとかそんなことはしたくないから。俺は悪人になりたくないから。


「ありがとうございます」


「あ、俺部室で最後の集まりあるんで」


「じゃーね!」


「じゃあな」


息が詰まるかと思った。なんでかは知らないけど。


最後に集まっていろいろ話をして、帰ろうとするけど、挫いた右足が思ったより腫れてる。


「香澄先輩、救急箱ありますか?」


「あるけど、足まだ痛い?」


「はい、すいません」


「右足めっちゃ腫れてるし青すぎる、すぐ病院行ったほうがいい、校長呼ぶ?」


「校長って…」


「みんな知ってるよ、蓮斗が校長の息子だってこと」


「そうなんですか、病院には行きます。けど親父呼ばなくていいです。」


お母さんは弁護士会があるとかで出張しているし、親父しか親はいないけど親父は嫌だ。咲良ちゃんから送って欲しいけど羽柴先生と一緒来たなら迷惑かけられない。あーどうしよう。親父に頼るしかない。


「香澄さん、湿布貼ってから親父呼んでくれますか、歩けないんで」


「分かった」


咲良ちゃんには今のうちにメールを送る


「咲良ちゃん、俺は親父から送ってもらうから羽柴先生と帰ってね、今日来てくれてありがとう」



部室に市川先生と親父が入ってくる。


「大丈夫か、蓮斗?」


「右足が…」


「めっちゃ腫れてるじゃないか。これは病院だな。」


「俺が連れていく、市川先生。」


「分かりました、蓮斗無理したんだな、ごめんな」


「大丈夫です」


「立てるか?」


全然右足に力が入らない。


「市川先生肩貸してやって」


市川先生と親父の肩を貸してもらってなんとか歩く。


「あー待って、メインフロアから通ると人が多いから裏口から行きましょう」


「わかった」


「蓮斗ここで待ってろ、車持ってくるからありがとう、市川先生」


「いえいえ」


「蓮斗、真面目すぎるところあるんだな」


「そんなことないです」


本当にそんなことない。ただ咲良ちゃんにカッコイイ所を見せたいだけ。


これが恋のパワーってやつ?


「本当に陽の川高校が優勝できたのはお前のおかげだ、ありがとな、親父きたぞ」


もうみんな知ってんじゃん…


「蓮斗行くぞ」


俺は病院に向かった。


初めて乗った親父の車で。
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