ノクターン
明日、東京へ帰るという日
「来年は軽井沢に来られないと思う。」と智くんは言った。
「どうして?」寂しさを隠して聞く。
「多分、塾の受験合宿へ行くことになるから。」
「中学を受験するの?」
「そうだよ。お兄ちゃんと同じ学校を受けるんだ。でも難しいから大変だよ。」
「大丈夫。智くんなら絶対合格するよ。がんばって。」
智くんと私の暮らす世界が違うことを改めて知らされた。
その夏を最後に、私は智くんと 一度も会っていなかった。