ノクターン
「軽井沢、明後日だね。智くん、緊張している?」
電話越しの声は また違ったときめきを呼ぶ。
「緊張しているよ、会社の面接と同じくらいね。」
智くんの家に行った時の、私の言葉を繰り返す。
「あー、智くん 私をからかっているでしょう。」
智くんの笑い声は 耳に心地良い。
私達は、その後 しばらく話して電話を切った。
今日の仕事の話し、ご両親との話し、ニュースの話し。
私達は、毎日会っているのに 話しが尽きない。
智くんは、会っている時もよく話す。
静かにゆっくり話すので あまり気付かれないけれど、智くんは 話し好きだった。
何でも話してくれるし、私の話しも良く聞いてくれる。
話す事、聞いてもらえる事で私は ストレスを解消できていると思う。
私が、悩んだり迷ったりしていると 智くんは サラっと何かを言ってくれる。
それはいつも、私の気付かない視点からの言葉で、とても新鮮だった。
アドバイスというほど 押付けるわけでなく。
智くんと一緒に過ごすようになって、私は柔軟な考え方ができるようになっていた。