ノクターン
その時、さっきの女性と 見送るように私の両親が店から出てきた。
「可愛いお嬢さんね。こんにちは。」その人は私に優しく声をかけた。
「こんにちは。」私も笑顔で挨拶をする。
「お名前はなんていうの?」
「高村麻有子です。」
「そう。麻有ちゃんね。何年生?」
「一年生です。」私はハキハキと答えた。
「じゃあ智之が二つお兄さんね。」
その人は智くんのお母様で、快活で都会的な美人だった。
「さあ、智くん 行きますよ。」今度は智くんに声をかける。
「僕、行かない。ここで麻有ちゃんと遊んでいる。」
智くんは 親しげに私を “ 麻有ちゃん ” と呼んだ。
「ダメよ。高村さんにご迷惑でしょう。」
私は智くんと遊びたかったので、お母様の言葉にがっかりした。
「大丈夫だよ。僕、ちゃんと言う事をきくし危ないこともしないから。」
だから智くんがそう言った時、とてもうれしかった。
「奥様、よかったら智くんを預からせてもらえませんか。麻有子も毎日一人で退屈していまして。智くんに遊んでもらえたら私達も助かります。」
母は私の気持ちを察していた。
慣れ慣れしく“ 智くん ” と呼んでいることも私はうれしかった。
「本当によろしいのですか?実はご婦人達の集まりで、連れて行った所で智之が退屈する事はわかっているんです。今年はお兄ちゃんがキャンプに行っていて こちらに来てないものだから、智之一人を置いていくわけにもいかなくて。」
智くんのお母様は不安気な表情ながら私の母の提案を受け入れてくれた。
「智くん、ちゃんと言う事をきいてね。」そう言って出かけて行った。