敏腕弁護士との政略結婚事情~遅ればせながら、溺愛開始といきましょう~
それほど背は高くなく、身体も痩せているのに、その身から滲む威厳のせいか、とても大きく感じる。
葵は条件反射で、シャキッと背筋を伸ばした。


「葵、須藤君の執務室の前で、なにをやっている?」


靴の踵を廊下にカツッと鳴らし、こちらに歩いてくる父の前で、無意識にごくっと喉を鳴らす。


「え、っと……。た、頼まれていた書類を、お届けに」


とっさにそう返したものの、今、手に書類などない。
父の視線が自分の手元に動くのに気付き、葵は慌てて両手を背に回した。
そんな反応だけで、父は彼女がなにを気にしているのか、見抜いたのだろう。
ふっと目を細めると、


「葵、久しぶりに外食して帰らないか。そうだな……銀座のフレンチレストラン『sophia』はどうだ?」


やや声のトーンを上げて、穏やかに笑いかける。


「え? あ、はい」


銀座のフレンチーー。
父が口にしたのは、とっておきの祝い事がある時、昔からよく行く名店だ。
かなり上機嫌なのは、葵にも察せられる。


「それなら急ごう」


父はそう言って、彼女に踵を返した。
そのまま来たばかりの廊下を戻って行く父に「はい」と返事をしながら、葵はもう一度櫂斗の執務室を気にした。
彼との密談が父をこれだけご機嫌にさせたとわかるからこそ、やはり気になって落ち着かない。
後ろ髪を引かれる思いで、父の背を追った。
< 17 / 17 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:678

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

社内では言えないけど ―私と部長の秘匿性高めな恋愛模様―

総文字数/84,449

恋愛(オフィスラブ)104ページ

ベリーズカフェラブストーリー大賞エントリー中
表紙を見る 表紙を閉じる
本音が言えない孤独な末端社員 宇佐美ちひろ(25) × 部下に怖がられることが悩みの鬼神部長 湯浅慧一郎(35) 不器用な二人の匿名の出会いから始まる 秘匿性高めな恋愛模様
魅惑な副操縦士の固執求愛に抗えない
  • 書籍化作品

総文字数/118,254

恋愛(オフィスラブ)222ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
神凪愁生(31)  軽薄そうに見せかけて誰にも本心を見せない ミステリアスな副操縦士 × 椎名芽唯(26)  恋心も女心も封印して整備に明け暮れる つれない航空整備士 不本意な合コンで出会った彼は 職業を偽って女性を愚弄する 最低なパイロット そんな彼に弱みを握られてしまった私は 『条件がある。俺の女になれ』 一方的な条件を突きつけられ 公私ともに振り回される羽目に…… 勝手で謎めく求愛に反発しながらも その心の奥底にある純真に触れた時 知りたい欲求はいつしか好意を通り越し―― 魅惑なパイロットに恋せずにはいられない 🛩―――――――――――――🛫 2022.11.12  完結公開 ✈️―――――――――――――🛬

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop