密室でふたり、イケナイコト。

「まず、これ」


目の前に差し出されたのは、成宮がいつも収録前に飲んでる、あれ。

そう、わたしがお見舞いにと買った、ホットジンジャー。


「ど、どうしてこれ……」


こんな暑い時期にホットを飲んでる人なんて、学校にはもちろんいなくて目立つから、絶対スタジオでしか飲まないって言ってたのに……


「土曜日、持ってきてくれただろ?」


と、足元に置いていたカバンから次に出てきたのは、紛れもなくわたしが買ったのど飴。


「どうしてそれが、わたしだって……」


「春名が俺にって持ってきたけど、アイツの前じゃ、これ飲んだことないし。
だからこれを飲んでることを知ってるのはお前だけ」


ふっと目を細めて優しく笑う成宮。


「っ……」


それに胸がキューンとして、特別って言われてるみたいで嬉しくなる。


「俺と春名が外で話してたとき、物が落ちる音が聞こえてそっちに行ってみようとしたら、やけに春名が慌ててたし、変だとは思ってたけど。その次の日に、春名がこれを持ってきたから、もしかしてあの時いたのはお前だったのかなって思って」

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