縁の下の恋


九州公演の初日がやって来た。



会場の勝手が違い多少手間取ることがあった。



「そこっ!退いて!」


「ああっ、それはっ!そこじゃないよ!…あんたは、あっちの方を手伝って来いよ!やりづらいなぁ!」



休憩をもらい、一度会場の外で気持ちを切替えようと、缶コーヒーを飲んでいた。その時…


またしても聞き覚えのあるヒールの音が近付いて来た。



「貴女っ!よくも、まぁこんな所まで…リョウの追っかけ?」



「いえっ、私は、仕事で来てるだけですから!」



「あらっ、そうだったわね!スタッフさんっ!せいぜい、黒くなるまで頑張るのね!くれぐれも言っておくけど、私達には近付かないで!分かってるわよね!所詮、貴女と私達とでは、住む世界が違うの!リョウのことは、雲の上の人って、思うことね!じゃあスタッフさん、頑張って」


一理の肩をトントンと叩いて去って行った。
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