虐げられた悪役王妃は、シナリオ通りを望まない

「ユリアーネ嬢に恥をかかせる気はなかった。ただマリアを妻にすると宣言したかっただけだ」

「既成事実みたいなものを作りたかったんですかね。でも国王陛下が怒るのも当然ですよ。ユリアーネを傷つけて、ベルヴァルト公爵家に喧嘩を売ったようなものですから。そういった事情は多くの貴族が知っていますよね、国王陛下に叱責されたのも見られている。私よりもランセル殿下の方が国王陛下を襲う動機があるように見えます」

考えれば考える程、ランセルの方が犯人っぽく感じる。

彼も自覚しはじめたのか、顔色が悪い。

「なんと言われても俺は潔白だ」

言葉は強いけれど、先ほどまでの怒りはすっかり萎えているみたい。もう一押しのような感触を得た私は、重ねて訴えた。

「私も潔白です。だから真犯人を捜しませんか?」

「真犯人?」

「私もランセル殿下も何もしていない。でも国王陛下が襲われたのは確かなのだから犯人が居るはずじゃないですか。その人物を特定すれば自動的に私達の疑いはなくなります」

ランセルは私の提案を検討しているのか、眉間にシワをよせる。

「……どうやって探すんだ?」

「それはこれから考えますが、探している間はお互いを陥れることなく協力したいです」

虚勢を張り対等に話しているけど、実際は王妃よりもランセルの権力が上だ。

城の兵士達もランセルに従う。

ここで彼の協力を取り付ければ、凄く動きやすくなるはず。逆に交渉決裂したら私はかなりピンチになる。

どきどきしながら答えを待っていると、彼は諦めたようにうなずいた。
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