虐げられた悪役王妃は、シナリオ通りを望まない
「ふう、緊張した」

扉が閉まった途端、息を吐いた私をロウが問い詰める。

「おい、さっきのはどういうことだ? 殺されかけたって」

ロウはかなりお怒りだ。

「社交界デビューの夜会の少し前に、話した通りのことが有ったの」

「そんな話聞いてない!」

「ショックで記憶がなくなっていたみたいで、私も最近思い出したの。宰相の事件で怖い目に遭ったのがきっかけだと思う」

「記憶が?……他に後遺症はないよな?」

ロウは本当に心配そうに私を頭から足元まで眺める。

「大丈夫。今は元気だよ。でも思い出したらあの三人をどうしても見逃せなくなって。まさか公爵が自白するとは思わなかったけど、直接抗議したかったから」

アリーセの無念を少しでも晴らせていたらいいのだけど。

「公爵か……リセにとって彼らは家族じゃないんだな」

「そうだね。ユリアーネもだけど元々希薄な関係だったから」

ロウは悲しそうな目で私を見る。私は暗くなった雰囲気が上げようと明るい声を出した。

「でも、これからは楽しく暮らすつもりだからね。もう忘れるわ」

「……本当にそれでいいのか?」

「もちろん。未来の国王陛下のお許しも出たからね。今更駄目って言われても受け付けないわ」

これから私は、新しい暮らしに向けて進んで行く。

アリーセの物語が終わったその先に。
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