虐げられた悪役王妃は、シナリオ通りを望まない
久しぶりの外出に胸が高鳴る。ずっとこの離れに閉じこもっていたからね。

離れから直接降りられる殺風景な庭を進んで行く。この先に屋敷を囲う壁があるのは確認済だ。

結構高い壁だけれど見張りもいないし、そんなに苦労せずによじ登って脱出可能だと目論んでいる。

予想通り、捕まる部分の多い壁は上りやすくて、以前に友人に連れていかれたボルダリングの壁よりは全然楽。

そう時間をかけずに脱出をした私は、意気揚々と町に向かった。


カレンベルク王国の城下町については小説で読んだ情報がある。

更に、侍女からそれとなく話を聞きだしておいたから、初めての外出でもなんとかなりそうだ。
アリーセの家、ベルヴァルト公爵屋敷から城下町へは歩くと結構距離がある為通常は馬車で移動するが、私は地道に歩くしかない。

辺に目だったら嫌だなと心配していたけれど、他の貴族屋敷からも徒歩で出かける使用人らしき人たちの姿があった。

皆同じ方向に進んでいるので、彼らも町に行くのだろう。

あまりキョロキョロしないように周囲を観察しながら歩く。

街並みは昔のヨーロッパのような雰囲気だ。大きな屋敷が並ぶ貴族街は道幅も広く整然としている。

歩き続けると景色が変った。

屋敷は途切れ、舗装されていない道が続く。

しばらく進み幅広の川にかかる橋を渡ると門が見えた。大きな荷物を持った商人らしき人々が行きかい活気に溢れた雰囲気だ。

「良かった」
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