虐げられた悪役王妃は、シナリオ通りを望まない
展開が変化して国王が来たらどうしようと、少し心配だったのであまりよく寝られなかった為疲れが取れていない。

ベッドに上半身だけを起こしぼんやりしていると、ノックの音が耳に届いた。

数秒置いて扉が開き、王宮侍女の紺のドレスを身に纏った女性ふたりが入室する。

私の身の回りの世話の為に王家が付けた侍女たちだ。

昨日簡単に紹介を受けていたのだけれど、時間がなくて挨拶のみだった。
今日から正式に仕えてくれるのだそう。

ふたりとも貴族家の娘だけど、見た限りでは威張ったところも気取ったところもなく、感じが良さそうな女の子たちだ。

背が低く顔が丸い茶髪の子がメラニー。
すらっとした長身で、黒髪の子がレオナ。

メラニー達は口にはしないものの、国王の訪れが無かったと知っている様子だった。

昨夜のことについては一切触れずに、入浴の準備を整えてくれる。

体や髪を洗ってくれると言われたけれど、丁重にお断りした。

お風呂の後はメラニーの選んでくれたドレスに着替えをする。

比較的襟が大きく開いた赤いドレス。素材は光沢のあるシルクでかなり華やかな印象だ。

公爵家のクローゼットには無かったタイプだけれど、なかなか似合っている。

エルマが用意した衣装の中で見かけなかったものなので、王家が用意してくれたものなのかな。

「よくお似合いですわ」

メラニーが笑顔で言う。

「ありがとう」
< 54 / 178 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop