虐げられた悪役王妃は、シナリオ通りを望まない
ロウが表情を和らげ言う。

本当に早く全て解決するといい。

そして王宮を出てバルテルに行ってみたい。そんな風に思った。



ロウと別れて私室に戻ると、これまで判明した事実を纏めてみた。

インベルとバルテルは元々ひとつの国。二百年前に三分の一のカレンベルク王国領土となり、バルテル辺境伯領が誕生した。

それ以来、国交はなく商人が個人的に行き来するだけ。

商人は豪商のリッツ家で、前当主の娘がベルヴァルト公爵家に嫁いでいる。

そのリッツ家は、元インデルの貴族。

知っている情報を紙に書き出すと溜息を吐いた。

リッツ家が定期的にインベルと取引が出来ていたのは、そのせいだったんだ。

インベルに貴族の親類が暮らしているのだから、太い繋がりがあるはずだもの。

そうだとしたら公爵とエルマはバルテルとの間に不穏な動きがあると、噂ではなく真実として知っていたのかもしれない。

デビューの夜会の後に公爵が、私とロウの会話内容を気にしていたのはそのせい?

それにしても考える程、良くない状況な気がする。

危なげなインベルと関係のあるエルマが、私の失脚を予言したのだもの。

何か企みを持っていそう。でも、一体何が?

物語の中でアリーセが擦り付けられた罪は、著しい浪費だった。

国が傾く程の金銭を使い込んだとのことで実際国庫は厳しかったようだけれど、そのお金を使っていた真犯人は未だに不明。
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