月夜見の女王と白銀の騎士

愛しき者の消失と焼けつく殺意

 数名の衛兵たちが担架で医務室へと運ばれていくのを見守るユリウスは、違和感を覚えていた。
 騒ぎの原因は、ひとりの衛兵の乱心だ。
 突如、各持ち場で警備の任務を遂行していた衛兵らを切り付け、最後には自らの体に火を着けたのだという。
 ユリウスが駆け付けた時にはすでに火は消されていたが、乱心した衛兵の皮膚は全身焼け爛れていた。
 かろうじてまだ息があるとはいえ、助かる見込みはないだろう。

(なぜ、火を着けた?)

 そう、違和感は自殺の手段だ。

 乱心した衛兵は帯剣していた。
 自ら命を絶つのなら、剣を使うだろう。
 または、城壁から海をめがけて飛び降りればいい。

(火を着けての自殺など。まるで……)

 ユリウスが、答えを求めて思考の海を漂いかけた時、辺りの慌ただしい様子を見ながらライルがやってきた。

「なんだか不穏じゃないか、ユリウス」

「ライル王子……」

「メアリにいい報告を持ってきてみれば、通りすがりの衛兵から聞いたぜ。乱心した衛兵が暴れたあと、自分に火を着けて自殺を図ったと」

 焦げた地面を見下ろすライルに、ユリウスは問いかける。

「似てると思うか?」

「イカレ加減は似てるな。ジョンを殺したやつらであると断言はできないが」

 ライルの親友を殺め、その恋人を連れ去った者たちの仲間とみられる者の死にざまもまた焼身。
 証拠隠滅にしてはいささか異常だと思っていたが、今回の衛兵も同じくだ。
< 112 / 165 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop