月夜見の女王と白銀の騎士

不幸の終焉と幸福の奪還

 ユリウスが愛剣スペランツァを腰に携えて城を出たのは、月が天辺に昇り切る前の時刻だった。

 近衛騎士団の各部隊は教会が建つ林を囲むように編制され、敵をひとりも逃がすことのないよう、王立騎士団が林の外で待機する中、夜の闇に紛れて進軍。
 ユリウスの目に教会の灯りが見えてきた頃、見張りと思しき敵兵と遭遇し、戦闘に突入した。

 荒く叫ぶ声と、金属の甲高い音があちこちで響く。

「次は誰だ」

 感情を殺した目で剣を振るうユリウスが指揮を執る第三部隊が、次々と敵兵を伏して教会に辿り着いた時には、多くの敵兵が教会へ入らせまいと奮戦していた。

 今回の作戦にイアンは不在だ。

 ヴェロニカの護衛にクラウスの第五部隊も城に残している。
 その代わりに、特別な助っ人が活躍していた。

「よう、ユリウス! 調子はどうだ?」

 アクアルーナの近衛騎士とは違う、天鵞絨(びろーど)色の鎧を纏ったライルだ。

 フォレスタットの王子であるライルを守るように剣を振るうのは、ライルが率いる自警団員たち。
 騎士の称号を持たぬ者も在籍する自警団と言えど、個々の技量は近衛騎士に勝るとも劣らない。

 決して臆することのない自警団の勇猛な戦いぶりを見ながら、ユリウスはライルに「なんの調子だ」と尋ね返した。
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