きっとこれは眠れない恋の証明。
proof 1


「でね、女優の卵を発掘するコンテストを開こうと思うんだけど、どうかな」

「……。」

ケチャップソースのかかったふわふわのオムレツを頬張りながら今日思いついた仕事の企画を口にすると、目の前に座る私の秘書──黒瀬京は小さくため息をついた。

「桜、食事の時は仕事の話はやめようって言ったよな」

言われて、そういえば昨日そんな約束をしたんだったっけと思い出した。

「あ、ごめんなさい」

そう言って小さくぺこっと頭を下げ、二口目のオムレツを口にした。あたたかくて甘くて、その美味しさに思わず頬が緩む。

このオムレツも、柔らかなロールキャベツも野菜がたっぷり入ったコンソメスープも、今テーブルに並んでいる夕食は全部、京が作ってくれたものだ。京の味付けはいつも優しくて丁度いい。

私は芝波プロダクションという芸能プロダクション事務所の取締役社長であり、京はそんな私の秘書でありながら、小さな頃から一緒に育ってきた幼なじみでもある。
私が芝波プロダクションの取締役社長といっても、社長に就任したのはつい三ヶ月前の事だ。
前任だった父が体調を崩し仕事を続けられなくなり、急遽父の一人娘である私が27歳にして跡を継ぐこととなった。

そして、急な就任だということもあり、仕事を覚えたりしたりで大詰めになっていたせいで体調を崩してしまったのは一週間前。
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