キスの練習 -美容室-

「こんにちは」

『いらっしゃいませ。失礼ですがお名前をよろしいですか?』


名前を言うと、こちらへっと笑顔で案内してくれる受付の綺麗なお姉さん。


『こちらでお待ちください。担当の者が参ります。ごゆっくり。』


案内された個室はとても高級感に溢れていて、なんだか落ち着かなかった…。


「……いい匂い…」


とってもいい匂いがする。
トリートメントかな?
それとも何かオイルの匂いかな?



コンコン。



3分ほどたってから、ドアをノックする音が1人には充分すぎる個室に響いた。


「はっ、はい!!」

『失礼します!担当させて頂く…えっ?!』

「ごめん。来ちゃった…」

『えっ?!お前、えっ……ちょっと待って。』


私を見て、驚きを隠せない彼。
固まって動かなくなってしまった。


「……あの、ごめんね。お仕事の邪魔しちゃって……」

『大丈夫ですよ。こちらこそ驚いてしまって、失礼しました。今日はどんな感じにしますか?』

「えっ?…あっ、あの〜」


いきなりお仕事モードにもどった彼に次は私が固まってしまう。


『お客様?大丈夫ですか?』

「あっ、すみません。…ならおまかせでお願いします。」


お仕事モードの彼に思わず敬語になってしまう。


『わかりました!おまかせですね。今でしたら、オススメのコースがあるのでそちらでどうですか?』

『コース??』


美容室にもコースとかあるんだ……


「はい。まぁ…簡単に言うと"苦手克服コース"ですね。」

『"苦手克服コース"??』


なんじゃそりゃ聞いた事ない……


『そんなコースがあるんですね…じゃあそれで。』


「かしこましました。」
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