二度目の結婚は、溺愛から始まる

思わず強い口調で百合香の言葉を遮ってしまい、慌てて言いつくろう。


「わたしと会ったことは、彼に言わないでおいてくれませんか? とても繊細な問題だから。どうぞ行って。待っているんでしょう? 支払いはわたしがしておきます」

「あの、でも……」


財布を取り出そうとする百合香を制し、伝票を取り上げる。


「いいから、行って!」



――蓮と顔を合わせたくない。


そんなことを思うのは、初めてだった。


「それでは、お言葉に甘えさせていただきます。……失礼します」

「身体を大事にしてください」

「……ありがとうございます」


窓の外を見れば、先ほど見た蓮の車があった。

百合香が店から出て来るなり、蓮が運転席から降り立ち、助手席のドアを開ける。

手を添え、優しく彼女を導く様子は――、



まるで仲睦まじい夫婦のようだった。

< 53 / 334 >

この作品をシェア

pagetop