二度目の結婚は、溺愛から始まる

静かな部屋に、乱れた呼吸と脱ぎ捨てられた服が床に落ちる音だけが響く。

しなやかな筋肉に覆われた身体は、七年前と変わらず美しかった。


「ほかの男とキスしただと……? おまえは、俺のものだろうが」


ベッドの上にわたしを押し倒し、我が物顔で見下ろす男へ腕を伸ばす。

屈みこんだ蓮のしなやかな髪に指さし入れて、くしゃくしゃにすれば、少しだけ年の差が縮まる。

ふっと笑みをこぼした蓮は、あらゆる場所にキスを落としながら、邪魔なものをすべて取り払う。

遠くつま先まで離れ、再び戻ってきた蓮が、わたしを覆い、包み込んだ。


「あっ」


肌を重ねた途端、わたしの身体は無意識に先を求めて、大きく震えた。

そんなわたしの反応に、蓮は目を細めて笑う。


「変わらないな……」


(わ、たし……何をっ……相手は、蓮なのにっ)


一気に酔いが醒め、顔を背ける。


「こっちを見ろ、椿」

「イヤっ」

「椿」


優しい声で囁いた蓮は、わたしの頬に手を添え、自分を見るよう促す。


「離してっ!」

「無理だ。そんな目で見られて、自制なんかできるわけないだろ」

「そんな目って……わたしは、べつにっ……」

「べつに?」

「あっ……えっ……やぁぁっ」


いきなり襲った圧迫感に仰け反った。


「あっっ!」


震えながら目の前の体にしがみつく。


「……れ、んっ!」

「くっ……落ち着け。こっちがもたない」

「あっ……いやぁっ」


久しぶりだからなのか、それとも相手が蓮だからなのか。
わたしの身体は、わずかな動きにも快感を拾い、喘ぐ口からは矯声が絶え間なく漏れる。

自分が、自分ではないようだった。


「れ、ん……蓮っ!」

「……椿」


ぎゅっと眉根を寄せ、呻き声を堪える顔に、たまらなくそそられる。

まるで、何かの中毒のように、わたしたちはお互いの欲望を貪り、交わった。

クタクタに疲れ、朦朧としながら悟ったのは……


(わたし……ずっと……手加減、されていたの……?)

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