熱海温泉 つくも神様のお宿で花嫁修業いたします
 

(そしたら、つくものみんなともお別れなんだよね……)


 ここに来たときには、とんでもないことに巻き込まれてしまったと、花は自分の運の無さを悲観した。

 けれど今では、つくもの面々と別れることを、まだ先のこととはいえ寂しく思ってしまう自分がいるのも事実だった。


(私が現世に帰ったら、八雲さんも今度はちゃんとしたお嫁さん探しをしなきゃいけないんだろうな……)


 嫁候補の花という隠れ蓑が無くなれば、八雲もまた周囲から嫁探しを急かされるのだろう。

 ふと、花の脳裏を父の話をしたときの八雲の淡々とした言葉と表情が過ぎる。

 ──八雲の妻となる女性は、一体どんな人なのだろう。

 そう考えたら、何故か花の胸の奥はチクリと針で刺されたように痛んで、花は思わず顔を上げると痛む胸に手を当てた。

 
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