熱海温泉 つくも神様のお宿で花嫁修業いたします
「鏡子は母のように、いつでもお前を想っていた。付喪神にとって、器が壊れての強制成仏と、本懐を遂げて自ら常世へ旅立つのでは終わりの形が違ってくる」
「終わりの形って……」
「本懐を遂げての成仏なら、媒体であった"器"は現世に残らない。逆に、器が壊れての強制成仏であれば現世に壊れた器が残る」
「それは、つまり……」
「ここに器となる手鏡がないということは、鏡子は自分のすべてを連れて常世へ旅立ったということだ。本懐を遂げての成仏。それは百年以上を生きた付喪神の、一点の悔いも残さぬ、最高の形の成仏だ」
八雲のその言葉を聞いた瞬間、わっと花の目から大粒の涙があふれ出した。
それは先程までの涙の質の比ではない。
温かく、優しく、ほんの少しの後悔を残した、胸が詰まる落涙だった。