メヌエット ~絵里加

「鎌倉で降りて、江ノ電に乗ろうね。ちょっと遠足みたいだけど。」健吾は笑う。
 
「幼稚舎の遠足、鎌倉行かなかったから。楽しみ。」

絵里加も笑顔で答える。
 

徐々に混んでくる電車の中、健吾は絵里加を抱くように庇う。

絵里加は、健吾を見上げて微笑む。


あまり話さなくても、目を合わせるだけで楽しくて。

一時間と少し。


鎌倉駅で降りた二人は、大きく息をついて笑う。
 

「絵里加、何か飲む?」

改札の外 小さなコーヒースタンドの前 健吾は立ち止まる。

絵里加はカゴバッグから、ペットボトルの水を差し出す。
 

「絵里加は大丈夫。ケンケン、飲む?」
 
「サンキュー。喉カラカラ。」


健吾は、絵里加から水を受取り ゴクゴク飲む。
 

「そんなに?」と笑う絵里加に、
 

「恋をすると、喉が渇くの。」と言う。


絵里加は、照れて俯いてしまう。
 


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