悪役令嬢は二度目の人生で返り咲く~破滅エンドを回避して、恋も帝位もいただきます~
 両手で頬をおさえ、赤くなっているのを隠そうとした。

「その髪飾り、使ってくれたんだな。よく似合っている」
「デビューの時にって言ったから……」

 ますます頬は熱くなる一方だ。
 この広間には多数の人がいて、皆こちらを気にしているはずなのに、周囲の人のことなどレオンティーナの頭から完全に消滅していた。

「俺は――嬉しかったけどな。ティーナが、俺の贈った髪飾りをつけてくれているのが」
「わ、私は……」

 レオンティーナは、ますます赤くなってしまう。
 こんなにも、ヴィルヘルムを間近に感じたことはなかった。
 ゆっくりとレオンティーナの前に膝をついたヴィルヘルムは、目を上げて問いかける。

「俺と、ダンスを踊ってくれませんか?」
「はい、喜んで」

 差し出されたヴィルヘルムの手を取る。
 ヴィルヘルムと、こうしてダンスをするのは初めてだった。
  また彼の背が伸びたこと、彼の手が大きかったこと。レオンティーナを見る彼の目に、情熱のようなものが浮かんでいること。
  ひとつひとつ、心の中に刻み付けていく。
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