僕の1番大切な人【リニューアル版】
『私ね、もう37でしょ。それなのに、子どもがいないじゃない。それって、やっぱりすごく寂しいの』


お酒の力がそうさせたのか、ずっと知らなかった姉さんの秘密を聞いてしまった気がした。


『子どもがいない人は、世の中にはたくさんいますよ』


ユウが、優しくフォローした。


『そうよね、確かにそう。だけど…私、本当は子どもが欲しくてね。ずっと望んでいたの、ママになりたいって』


姉さんは、そう言って、またワインを1口飲んだ。


そっか、姉さんは、兄さんとの子どもが欲しかったんだ…


『でも、どんなに望んでも、出来ないものは仕方ないわよね。残念だけど…』


『姉さん...』


『うん、私が原因なの。子ども、産めない体なんだって』


僕もユウも、一瞬、言葉を失った。


そんなこと、全く知らなかった…


『...そうだったんだ。ごめん、知らなくて』
< 59 / 96 >

この作品をシェア

pagetop