エリート御曹司が花嫁にご指名です
『見合いなんて反対だ』
『でも、出会いがないから、汐里がお父さんに頼んでいるのよ? あなたがどうのこうの言ってもねぇ』
『壮兄が反対しても、私はお見合いするって決めたから』
 
 私のお見合いにまで口を出すなんて、シスコンにもほどがあると、ビシッと言いきった。
 
 壮兄は重いため息を漏らし、首を左右に振り振り、リビングダイニングから出ていった。
 
 そんな一時間前のことを思い出しながら、私は桜宮専務のアイスコーヒーを用意している。
 
 専務室へ入室すると、桜宮専務は窓辺に立ち、景色を眺めていた。
 
 ううん。眺めているのではなく、考え事をしているのかもしれない。

「コーヒーをお持ちしました」

 背を向けている桜宮専務に声をかけ、執務デスクの上にアイスコーヒーを置く。

「ありがとう」

 桜宮専務は振り返り、こちらへ歩を進めてくる。

「そうだ。今日のランチは予定を入れておいてくれ」

「かしこまりました。お時間は? レストランの予約をいたします。何名に?」

 しっかり頭に叩き込むつもりで、無駄のない動作で椅子に腰かける桜宮専務をまっすぐ見る。

「俺と汐里だけだ」
「えっ……? もう一度お願いします」

 聞き間違いよね?

「今日は誕生日だろう? 夜は先約があるから、ランチをごちそうする」

 目を丸くして、驚きを隠せない。

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