エリート御曹司が花嫁にご指名です
さすが桜宮専務ね。お店のチョイスがいい。
 そう思った途端、女性を連れてきたことがあるのだろうと脳裏をよぎり、悲しさよりも虚しさが先に立つ。

 桜宮専務ではなくて、私を好きだと言ってくれる人とこんなところでデートをしたい。

 天井までの高い窓のあるテーブルに着く。

 ここまで案内される間に、食事をしているテーブルを目にしたが、男性はスーツ、女性はおしゃれな服装で、仕事中のランチよりもプライベートで来ているように見受けられた。
 
 コースを選び、料理を待つ間も緊張は否めない。

「機内食のプランが――」
「今は仕事じゃないんだ。帰ってから聞くよ」

 なにか話さなければと思った私は、即座に遮られてしまった。

 仕事じゃなければ、私の誕生日をただ単に祝う会……?

 思案しているうちに、ウエイターがやってきて、丈の長いグラスにノンアルコールのシャンパンを注ぐ。

「汐里、誕生日おめでとう」

 桜宮専務はシャンパングラスを掲げて、お祝いの言葉を口にする。

「ありがとうございます」

 まだ緊張感は続いており、顔が引きつっている気がする。

「覚えていてくださっているとは思いませんでした」

 こんなことは初めてなので、淡い期待をしてしまいそうになる。


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