【女の事件】豚小屋

第2話

ひろつぐは、6月24日に春日井ネオポリス(工業団地)内にある大手自動車メーカーの純正部品製造工場に再就職して、もう一度やり直すことにした。

ひろつぐは、保護観察士の男性から『行き帰りは職場の送迎バスに乗って行くこと…職場と家庭の間だけ往復すること…勤務時間内に与えられた仕事をすること…お給料は全額家に入れなさい…お昼は職場で出された食事だけを食べること…上の人の言うことを聞いて素直に返事する…分からないことがあれば教えてもらいなさい…』と言うてから、執行猶予期間中だと言う自覚を持ちなさいと口やかましく言われた。

だから『オレに何を求めているのだよぉ…』と気だるい表情になっていた。

保護観察士の男性は、ひろつぐが執行猶予期間中に立ち直ることができて、ご遺族のみなさまに素直な心で謝罪して、執行猶予が明けた時に普段通りの暮らしができるようになることを望んでいたから、厳しい口調で言うた。

だが、ひろつぐが素直な心でご遺族のみなさまに謝罪することができると言う保証は全くない。

ひろつぐは、1日目はなれない仕事でもどうにかがんばることができた。

しかし、6月26日頃に上の人から言われた言葉に腹を立てた後、職場放棄をした。

ひろつぐは、保護観察士の男性とヤクソクしたことなんかきれいに忘れていたから、再びダラクの一途をたどることになった。

ところ変わって、名古屋市東区出来町にあるひろつぐの父親が経営している縫製工場にて…

工場の従業員さんたちの朝礼の時間の時に、毎年夏に支給していたボーナスが今年は出ませんと現場主任の男性が伝えた。

それを聞いた従業員さんたちは、ラクタンした表情を浮かべた。

福主任の男性が『いつも通りに仕事をしてください…』と言うて、従業員さんたちをなだめたので、大きな混乱は避けられた。

ひろつぐの父親は、ものすごくもうしわけない表情で事務所へ戻った。

事務所へ戻った時であった。

ひろつぐの父親は、女性事務員さんから1枚の書面を突きつけられた後、思い切り怒鳴られた。

「ちょっと社長!!社長!!」
「なんだよぉ…」
「社長!!朝から泣きそうな声で言わないでください!!」
「どうしたのだよぉ…」
「社長!!具合悪そうな顔をしている場合じゃないのよ!!」
「どうしたんだよぉ…」
「社長!!あんたは従業員さんたちに『公私混同をしないように…』とか『社会の常識をまもりたまえ…』と言うてえらそうに言うておいて、そう言うあんた何を考えているのかしら!!あんたね!!今すぐに書面に目を通しなさいよ!!」

女性の事務員さんは、一枚の書面をひろつぐの父親に差し出してから『ドタワケ!!』と怒鳴りながらデスクを叩いた。

ひろつぐの父親は、キョトンとした表情でこう言うた。

「この書面は?」
「警告書!!」
「警告書って?」
「信金からの警告書!!」
「信金から?」
「そうよ!!」

ひろつぐの父親は、なおもキョトンとした表情になっていた。

なんで信金から警告書が来たのか分からない…

女性事務員さんは、強烈な怒りを込めてひろつぐの父親を怒鳴りつけた。

「あんたは、いつ頃から金銭感覚がマヒしているのかしら!!」
「えっ?どういうわけなのだね?」
「書面をよーくみなさい!!」

警告書の内容は、6ヶ月前に信金から受け取っていた5000万円の約束手形が決済の期限が過ぎているのに1円も決済されていない…2ヶ月の猶予期間を与えるので猶予期間内に全額手形を決済せよと言うことである。

ひろつぐの父親は、ぼんやりとした気持ちになっていたので、気だるい声でこう言うた。

「書面の内容が分からない…」
「ああああああああ!!イラつくわね!!あんたはそれでも経営者なの!!都合が悪くなったら逃げることしか頭にないのね!!サイテー!!」
「逃げてなんかいないよぉ…」
「だったら、書面を見て!!」
「後で見る…」
「いいえ!!今すぐに見てください!!あんたね!!信金からユウシが下りんユウシが下りんユウシが下りん…ってビービービービー泣いているようだけど…どうして1円もユウシが下りないのかと言う原因がゼンゼン分かっていない…だから警告書が届いた!!警告書が届いたと言うことは、従業員さんたちに支払うお給料がなくなりますよと言うよ!!」
「わかっているよぅ~」
「分かっているのであれば、逃げないでください!!それともうひとつ、先週労働基準監督署からも警告書が届いたと言うこともお伝えしておくわ!!重大な問題があるとのに改善しなかったから、近いうちに緊急の監査が入るのよ!!それも、裁判所の人と一緒に来るのよ!!社長!!」
「わかったわかった…もういい…しんどいよぉ…しんどいよぉ…」
「社長!!」

この時、事務員のデスクの上に置かれているビジネスホン(昭和60年製)の呼び出し音が鳴っていたので、事務員さんは電話に出た。

「はい!!多川縫製!!しばらくお待ちくださいませ!!社長!!電話!!」
「どちらから?」
「信金の担当者よ!!」
「おらん(いない)と言うてくれ…」
「そうは行かないわよ!!社長!!5000万円の約束手形が決済できてないから、信金の担当者の人が激怒しているわよ!!電話に出なさい!!」
「イヤだ…出たくない…」
「いいえ!!出てください!!会社の経営に関わる問題よ!!」
「出るよぉ…だけど今日はしんどいよぉ…ああ!!もうイヤだ!!」

ひろつぐの父親は、事務所から勝手に逃げ出した。

「社長!!電話はどうするのですか!?社長!!」

置き去りにされた受話器のスピーカーから、信金の担当者の怒号が聞こえていた。

事務所から逃げ出したひろつぐの父親は、名古屋市中区の地下鉄大須観音駅の近くにあるパチンコ店に逃げ込んだ。

ところ変わって、パチンコ店の店内にて…

ひろつぐの父親は、工場から逃げ出した後にパチスロ遊びに夢中になっていた。

店内には、パチスロの電子音が響いていたのと同時にスピーカーから大音量でチームしゃちほこの歌が流れていた。

ひろつぐの父親が信金から受け取っていた5000万円の約束手形は、従業員さんたちのお給料を払う目的で使う予定であった。

その時に、高校時代の友人につかまった。

友人はあわれみを乞うていたので、そのお金を貸してしまった。

そのことを従業員さんたちに隠していた。

ひろつぐの父親は、5000万円を貸した友人の男性と会うためにパチンコ店に来ていた。

逃げ込んでから120分後に友人の男性と会ったので、白川公園へ移動してお話することにした。

ところ変わって、白川公園にて…

ひろつぐの父親は、友人に約束手形を返してほしいとお願いをした。

しかし、友人が『待ってくれ待ってくれ…』と女々しい声で言うたので、大ゲンカになった。

「オラオドレ!!オドレいつまで逃げ回わる気だ!!いつになったら5000万円の約束手形を返すのだ!!」
「多川…許してくれ…まだ原資ができていないのだよぅ…」
「オラオドレ!!そうやってこすい手を使って逃げ回っているようだな!!」
「多川…ホンマに困っているのだよぉ…わかってくれ…この通りだ…」
「オドレ殺すぞ!!人から5000万円を借りておいて、1円も返さないのであれば考えがあるぞ!!」
「多川…この通り…わかってくれ…借りたものは返さなければならないことはよくわかっているよぉ…」
「ふざけるな!!オドレはオレに首を吊れと言いたいのか!?」
「そんなことは言うていないよぉ…多川にメイワクをかけてしまったことは詫びるよぉ…ホンマにこの通り…わかってくれ…わかってくれ…わかってくれ…」
「オラ!!オドレは土下座をしてあやまればこらえてもらえると思っているようだけどそうは行かんぞ!!」
「なっ…なんだよ!!オレ、多川にメイワクをかけたので土下座をしてあやまっているのだよ…」
「やかましい!!だまれ!!」
「それじゃあ、どうすればいいのだよ…多川…おい多川…」

友人の男性は、真っ青な表情でひろつぐの父親に許しを乞うた。

しかし、ひろつぐの父親は『どんなに許し乞いしてもダメだ!!』と言うて硬くなった。

友人の男性は、ひろつぐの父親になおも許し乞いをした。

この時、木陰でひろつぐが聞き耳を立てて聞いたので、ひろつぐの怒りがより強まっていた。

そしてその日の夜、恐ろしい悲劇が発生した。

その日の深夜11時30分過ぎのことであった。

場所は、めいてつ犬山駅の北北西にある木曽川の河川敷の公園にて…

「イヤァァァァァァァァァァァァ!!イヤァァァァァァァァァァァァ!!」

(ビリビリビリビリビリビリ!!ブチッ!!)

河川敷の草むらで、帰宅中の女子高生が黒の覆面をかぶって、黒のジャンパーを着ている男に連れて行かれた。

その後、草むらに倒されて、着ていた制服のブラウスを破られて、ブラジャーをちぎられた。

そして、スカートを上げられて、グーで顔を殴られた後、ボロボロに傷つくまで犯されて殺された。

それから6時間後のことであった。

ところ変わって、岐阜県との県境付近の地域にある養豚小屋にて…

養豚農家の主人は、いつものように養豚の豚たちにエサを与えていた。

そんな時であった。

足元に黒の通学靴が転がっていたので、主人は不審に思っていた。

そんな中で、奥の方にいる豚たちがより不安定な鳴き声をあげていた。

それを聞いた主人は、急ぎ足でかけて行った。

すると…

ボロボロに傷ついて、恥ずかしい姿で亡くなった女子高生の遺体が横たわっていたのを目撃した。

「オーイ!!たいへんだ!!ケーサツ!!ケーサツ!!」

早朝6時過ぎに、養豚小屋の前に愛知県警のパトカー20台がけたたましいサイレンを鳴らして次々と到着した。

現場の小屋には、愛知県警の捜査1課の刑事たちと鑑識警察官たちがあわただしく往来をしていた。

現場検証の結果、容疑者の身元は割り出す決め手がとぼしいので、捜査が難航すると言うことだ。

愛知県警の捜査1課の刑事たちのイライラが高まっていた。

その中で、パトカーが1台到着した。

到着したパトカーの中から、女子高生の父親があわてて出てきた。

女子高生の父親は、こともあろうにひろつぐの父親から金を借りていた友人だった。

ボロボロに傷ついて亡くなった娘を見た父親は、強烈な泣き声をあげて発狂していた。

さて、その頃であった。

ところ変わって、覚王山にあるひろつぐの実家にて…

家の居間の食卓には、ひろつぐの母親とあずさとひであきとほのかがいて、朝ごはんを食べていた。

ひろつぐの父親とふさえとふさこは、朝ごはんを食べずに家を出ていたので、あずさはものすごく心配になっていた。

ひろつぐは、職場放棄をした後に行方不明になったので、家の空気が大きくよどんでいた。

そんな中で、春日井ネオポリスにある工場から電話がかかっていたので、母親が出た。

「もしもし…ひろつぐはまだ帰っていませんが…昨日…工場で何があったのですか?…すみません…今日1日だけ休ませてください…すみませんけど…よろしくお願いいたします。」

母親は、受話器を置いた後に大きくため息をついた。

近くで聞いていたあずさは、ものすごくもうしわけない表情になっていた。

ひろつぐの学資保険と将来のために貯めていた貯金を解約して、全部ひでのりの家族の幸せのために使われた。

思うように恩返しができていないから、コンワクしていた。

あずさは、ますますもうしわけない表情でひろつぐの母親に言うた。

「おばさま…おばさま…」
「ああ…あずささん。」
「あの~…やっぱり…」
「どうしたのかしら?」
「おばさま…アタシたち…ひろつぐさんにもうしわけないことをしてしまったと思っているので…」
「まだそんなことを気にしているのかしら!!」

ひろつぐの母親は、イライラとした口調であずさに言うた。

「あずささん!!あずささんの気持ちはよくわかるけど…おばさんは、あずささんたちの家族が幸せに暮らしていると言うことをアピールすることで恩返しができると言うたのよ!!」
「おばさま!!アタシたち家族は精一杯にアピールしてきたのよ!!なのに、十分に恩返しができたとは思っていないのよ!!」
「あずささん!!同じことを何べんも言いたくないけど!!おじさまとおばさまは、あずささんたちの家族が幸せに暮らして行くことができれば十分なのよ!!ひろつぐの学資保険と将来のために貯めていた貯金を解約してあなたたちの幸せのために回したのは気持ちだから…同じことを何べんも言わさないでよ!!」
「おばさま!!」
「あずささん!!もうすぐひであきとほのかの幼稚園のお迎えのバスが来るのでしょ!!早く用意しなさい!!」

あずさは、ひろつぐの母親からより強烈な声で言われたので気持ちがイシュクしていた。

アタシたち…

一生懸命になって幸せに暮らしていることをアピールしてきたのに…

十分な恩返しができていないから困っているのよ…

どうすればいいのよ…

どうすればいいのよ…

どうすればいいのよ…
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