【女の事件】豚小屋

第15話

さて、その頃であった。

南川は八王子市内のパチンコ店にいてパチスロ遊びに夢中になっていた。

あいかわらず大負けばかりが続いていたので、となりに座っている客のドル箱に入っているパチンコ球を勝手に持ち出して、景品交換所へ持って行くことを繰り返していた。

南川が無断でパチンコ球を持ち出して、現金に換えている現場は、店内にある防犯カメラに記録されている。

そのことが分かっているのに、南川は悪いことを繰り返していた。

この日の午後２時過ぎのことであった。

あいこはお使いで文房具の買い出しに行ってたが、この時南川が勝手に持ち出したパチンコ球から換金をして、大金を手にしてニヤニヤとしているところを目撃したので、こわくなって逃げ出した。

やっとの思いで、パチンコ店から800メートル離れた公園まで逃げてきたあいこは、黒のYシャツに白いネクタイで白スーツを着て、顔に大きなきずあとがついているやくざの男に声をかけられた。

「ああ、ねーちゃんよぉ。」
「はい、なんでしょうか？」
「ねーちゃんにちょっくら聞きたいことがあるのだけどかまんか？」
「えっ？聞きたいこと？」

やくざの男は、あいこに写真を出したあとこう言うた。

「ねえちゃん、わしらはこの写真に写っている男を探しているのだけど、しらんか？」

恐る恐るの表情でやくざの男から写真を受け取ったあいこは、写真に目を通した。

この時、あいこの背筋に強烈なセンリツが走った。

南川…

やくざの男が探している写真の男は、南川だった…

一体どういうわけなのよ…

やくざの男は、あいこにイライラとした声で凄んでいた。

「ねーちゃんよぉ!!」
「はい!!」
「こっちは急いどんねん!!はよ返事せえよ!!」
「(キョトンとした声で)返事？」
「写真の男を知っとんのかと聞いてんねん!!はよ返事せえよ!!」
「(ビクビクしながら言う)いえ…知りません…」
「ホンマに知らんのか!?ウソを言うたらどないなるんか分かっとんか!!」
「ですから、写真に写っている男のことは知りません!!」
「わかった…ほな…」

やくざの男は、あいこにこう言うた後その場から立ち去った。

しかし、あいこは頭の中でパニックを起こしていた。

一体どういうわけなのよ…

やくざの男が、南川の写真を持ってたと言うことは…

南川が…

ナワバリ荒らしをしていたと言うこと…

アタシ…

何がなんだか…

わけがわからなくなったみたい…