【女の事件】豚小屋

第7話

7月20日頃のことであった。

この日の日中、ひろつぐの母親は区役所へ行って、やめる手続きを取った。

課長さんは、ひでのりに新入りさんたちの晩ごはんのお世話をお願いしていたことをひろつぐの母親にわびていた。

しかし、ひろつぐの母親は思い切りキレていたので、課長さんのまたくらを思い切りけとばした。

そして、背中を向けて区役所を去った。

ひろつぐの父親は、ひどい頭痛がおさまらないので区内にある病院へ行って検査を受けた。

この時、医師から『要精密検査』だと言われたので気落ちしていた。

MRI検査の時に、脳の血管に大きなコブが見つかったので、大規模病院に検査入院が必要となっていた。

しかし、その気にはなれなかった。

そんな中で、恐ろしい悲劇が立て続けに発生した。

夕方4時前のことであった。

ところ変わって、小牧市にある警察署の前にて…

ふさえとふさこが連れ去られた事件で、別件で逮捕した男を重要参考人として取り調べていたが、男はモクヒしていた。

ケーサツは、重要参考人の男を一旦帰宅させる措置を取った。

悲劇は、その直後に発生した。

男は、口笛をふきながらシャクホウされたのでうれしい表情をしていた。

この時、男の前に黒のニッサンプレジデントが停車した。

車の中から、派手なシャツを着てリーゼントの男5~6人に取り囲まれた。

そして…

男は、やくざの男たちに持っていたサバイバルナイフでズタズタに斬りつけられた。

この時、付近にいた警察官が拳銃で警告射撃をした。

銃声におどろいたやくざの男たちは、その場から逃走した。

その後、数人の刑事たちが駆けつけてきた。

数人の刑事たちは、男に呼び掛けていた。

男は、弱々しい声で刑事たちに必死になってなにかを伝えていた。

「すみません…すみません…すみません…」
「おい!!しっかりしろ!!しっかりしろ!!」
「刑事さん…すみません…最後のお願いを聞いてください…」
「最後のお願い…」
「生きてやり直しなんて…できない…オレ…オレ…オフクロのもとへ…行く…大好きなオフクロのもとへ行く…」
「おい!!アホなこと言うな!!」
「刑事さん…生きてつぐなうことはできると言うたよね…」
「ああ、言ったぞ!!」
「あんたらは、なにをコンキョにそんなことを言うたのかよぉ…」
「生きていてもつぐないはできる!!」
「できないよ…できないよ…」
「おい!!しっかりしろ!!今だったら間に合う!!お前はまだ生きているのだ!!生きている間に刑務所でつぐなえばいいのだよ!!」
「無理だよ…あすけ…あすけ…あす…(ガクッ)」
「あすけ…あすけ…」

重要参考人の男は、最後に『あすけ』と言う言葉を残して死んだ。

この時、ふさえとふさこが監禁されている場所が豊田市郊外の足助(あすけ)であることが判明した。

愛知県警は、豊田市の警察署に対して緊急の出動要請を出した。

ふさえとふさこが監禁されている豚小屋は、足助城の南東へ6キロのところにある無人の養豚場だと言うことが判明した。

愛知県警は、現場から半径700メートルのエリアを封鎖した。

事件現場の豚小屋に、愛知県警のSAT隊員200人が到着した。

ところ変わって、覚王山にあるひろつぐの実家にて…

実家の居間に、保護観察士の男性とひろつぐの両親がいて話し合いをしていた。

保護観察士の男性がしくしく泣いているひろつぐの両親に怒鳴り散らしていたので、おだやかに話し合いをすることができない…

そこへ、電話の着信音が鳴った。

電話はあずさからであった。

あずさは、ひであきとほのかを養護施設に預けた後、清水の実家へ向かっていたものと思われたが、途中の道でひであきとほのかが誘拐された。

あずさは、くすんくすんと泣きながら保護観察士の男性に電話で伝えていた。

「もしもし…もしもし…くすんくすんくすん…くすんくすんくすん…」

ところ変わって、静岡鉄道の新静岡駅の公衆電話のコーナーにて…

あずさは、公衆電話から覚王山のひろつぐの実家に電話をしていた。

あずさは、くすんくすんと泣きながらひであきとほのかが誘拐されたことを伝えようとしていた。

しかし、うまく伝えることができなかったのでくすんくすんと泣くより他はなかった。

『あずささん…あずささん!!』

受話器の向こう側で、保護観察士の男性の叫び声が聞こえていた。

しかし、あずさの耳には届いていなかった。

「くすんくすんくすん…くすんくすんくすん…もしもし…もしもし…アタシ…もうイヤ…ひであきとほのかが誘拐された…くすんくすんくすん…くすんくすんくすん…」
『あずささん!!あずささん!!』
「くすんくすんくすん…アタシ…カレのもとへ行く…大学の時に好きだったカレのもとへ行く…ふさえの実のパパのもとへ行く…くすんくすんくすん…くすんくすんくすん…カレと思い出の場所へ行く…くすんくすんくすん…」

このあと、あずさは受話器をあげたままその場から走り去った。

覚王山の家にて…

「あずささん!!あずささん!!」

保護観察士の男性は、ひっきりなしに叫んでいたが、応答がなかった。

大変だ…

あずささんが自暴自棄におちいった…

保護観察士の男性は、警察署へ電話をするために受話器を置いた。

この時、着信音が鳴ったので、電話に出た。

電話は、ひろつぐにケーサツへ72時間以内に出頭させろと求めていた犯人グループからであった。

「もしもし…多川でございますが…」
『多川ひろつぐの家か!?』

受話器の向こう側から、豚小屋にいる豚たちがより強烈な鳴き声をあげて鳴いていたのが聞こえた。

豚小屋の中にて…

この時、ひでのりとひであきとほのかがボロボロに傷ついているふさこと一緒に黒い覆面をかぶった犯人グループたちにナイフを突きつけられていた。

リーダーの男は、受話器の向こう側にいる保護観察士の男性に凄んで行った。

「オラオドレ!!多川ひろつぐの両親を出せや!!保護観察士のオドレには用はねえんだから早く出せやオラ!!時間がねーから早くしろ!!」
『もしもし…落ち着きなさい…落ち着きなさい…』
「てめえには用はねえんだよ!!早く多川ひろつぐの両親を出せ!!」
『わかった…出す…出す…』
「早くしろ!!ぐずぐずするんじゃねえ!!」
『君たち…その前に私の話を聞きなさい…』
「てめえは引っ込んでろ!!多川ひろつぐの両親を出せ!!」
『だから待ちなさい…どうして穏やかに話し合いができないのだ!!私の言うことが聞こえないのか!!』
「何や!!もういっぺん言ってみろ!!よくもオレたちの居場所をサツにチクったな!!今から人質を殺すぞ!!」

覚王山の家にて…

保護観察士の男性は、必死になって犯人グループに呼びかけていた。

男性の呼びかけもむなしく、ひでのりとふさことひであきとほのかの強烈な叫び声が受話器の向こう側から聞こえていた。

『ギャァァァァァァァァァァァァ!!ギャァァァァァァァァァァァァ!!』
『おとーさーん!!おねーちゃーん!!』
『おとーさーん!!おとーさーん!!』

電話は、そこで切れた。

夜9時半過ぎのことであった。

(ブーッ!!ブーッ!!ブーッ!!ブーッ!!ブーッ!!ウーウーウーウーウーウー!!)

事件現場で激しい銃撃戦が発生する危険性が高くなったので、防災行政無線のスピーカーからより強烈なブザーが鳴り響いていたのと同時にパトカーのサイレンがよりけたたましい音を鳴り響かせていた。

そして、待機していたSAT隊員たちがベレッタ(シューティング)を持って中に突入した。

そして、2ヶ所の豚小屋の中でSAT隊員と犯人グループとの銃撃戦が始まった。

(ズダダダダダダダダダダダダダダ!!ズダダダダダダダダダダダダダダ!!ズダダダダダダダダダダダダダダ!!)

事件現場の2ヶ所の豚小屋で、激しい銃撃戦が発生した。

ひでのりとふさことひであきとほのかが監禁されている豚小屋での銃撃戦は、犯人グループの男たち全員が突入して来たSAT隊員によって全員射殺された。

そして、もう一ヶ所の豚小屋で発生した銃撃戦でも、犯人グループの男全員が突入して来たSAT隊員に撃たれて全員射殺された。

それと同時に、ひろつぐはSAT隊員たちにナイフでズタズタに斬り裂かれて、殺された。

銃撃戦がおさまった後、愛知県警の警察官100人が現場に入って捜索に入った。

ひでのり父子5人が無事に発見されることだけをいのりながら、総力をあげて敷地内の捜索を開始した。

しかし、ひでのり父子5人は行方不明になっていたので、かえっていらだちが強まっていた。

どうすればいいのだ…

一刻も早く父子5人を無事に発見しなければならないのに…

時間ばかりが経過して行く…

どうすればいいのだ…

時間がない…

急がないと…

時間がない…

神さま…

神さま…

どうか、父子5人が全員無事で発見されるように…

どうか、父子5人全員を無事に家族のもとへ帰すことができるように…

捜査員たちは、ひでのり父子5人全員が無事に見つかることを信じて、必死の捜索活動を続けていた。

残された時間は…

もうない…

急がないと…

急がないと…

急がないと…

それから8時間後のことであった。

よりサイアクな悲劇が発生した。

事件現場は、ひろつぐの父親が経営していた縫製工場の敷地内で発生した。

工場で働いていた従業員さんたちが暴徒化していたので、工場の近辺は危険度が高まっていた。
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