シンフォニー ~樹
30

健吾達は 正式に夫婦となり みんながホッとした夏の初め 樹のお祖父様が倒れた。


夏休みに入った恭子が 樹の家に 泊まっていた時だった。


平日の午前中 みんなが 仕事に出た後のことで 家には お祖父様達と 母と恭子の4人しかいなかった。
 


母と恭子で 家事をしていた時間。

リビングから お祖母様が 大きな声で “誰か” と呼んだ。


先に駆け付けた恭子は 胸を押さえて 苦しむお祖父様を見た。
 

「お祖父ちゃん、お祖父ちゃん。」

と うずくまるお祖父様の 背中をさする恭子。


母が 駆けつけると 恭子は 水を取りに走る。
 

「お祖父ちゃん、お水。少し飲める?」

恭子が差し出す水を 一口含んで 苦しみながら “ありがとう” と言ったお祖父様。


「恭子ちゃん、救急車を呼ぶから。お祖父様をお願い。」

と、母が電話をかける間 恭子は ずっとお祖父様の 背中を撫で続けた。
 


苦しそうなお祖父様の声は 徐々に小さくなり 救急車が到着した時には 意識を失っていた。


バタバタと 救急車に乗せられるお祖父様。

一緒に乗って行く母は、
 

「恭子ちゃん、麻有ちゃんに 連絡して。後をお願い。」と言った。
 



< 108 / 166 >

この作品をシェア

pagetop