シンフォニー ~樹
35

お祖父様との最後の夜 男4人でベッドを囲む。

恭子を 一人で帰すことは 不安だったけれど。

意外にも恭子は 強い目で頷いてくれたから。
 

「樹、恭子ちゃん、すごく良い子だね。麻有ちゃんが駆けつけるまで ずっと お祖母様の手を握って 励ましていたらしいよ。」


お祖父様が 作ってくれた 男だけで話す時間。


智くんの言葉に、
 

「はじめてのことで かなりショックだったと思う。昨日は ずっと震えていたから。」

樹は 頷いて静かに言う。


「俺達、倒れた所に いなかったじゃない。実際に見たら 相当ショック受けると思う。気が動転して 何もできなくなるよ。多分。」

と父も言う。
 

「でも 恭子ちゃん、偉いよね。お水を飲ませたんだから。」

タクシーの中で聞いたことを 翔が言うと 父と智くんは 知らなかったようで “えっ” と聞き返した。
 

「お祖父様、一口飲んで 恭子にありがとうって言って その後 気を失ったらしいよ。だから お祖父様の 最後の言葉は“ ありがとう” なんだよ。」

樹は 恭子から聞いたことを話す。


父と智くんは 驚いたように “へえ” と言った。
 


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