シンフォニー ~樹
44

4月最初の日曜日。

翔の合格祝いと 絵里加の慰労を兼ねて みんなで食事をする。
 

「カッ君、すごいわ。本当に お医者様になったのね。」

絵里加に 賞賛の目で見られて、照れる翔。
 
「みんなのおかげだよ。試験勉強している時 恭子ちゃんが 夜食を作ってくれたし。」

感謝の目で 樹と恭子を見つめる翔に 絵里加と恭子は 顔を見合わせる。
 

「恭子ちゃん、あのスープ?」

絵里加の言葉に、笑って頷く恭子。
 
「何だよ、俺 ヤバい物 飲んだの?」

翔が驚いた顔をする。

「大丈夫です。絵里ちゃんが 頭が良くなるスープのレシピを ネットで調べてくれたの。それを作ったんです。」

必死で言う恭子にみんなが声を出して笑う。
 


これから 研修医として働く翔に 父は 病院の近くのマンションを買った。

夜中や昼間でも 帰ってゆっくり休めるように。
 
「家だって、遠い訳じゃないんだから。余裕のある時は、家に 帰って来いよ。」

と言って 鍵を渡す父に 翔は笑顔で頷いた。
 

「一人前になるのは まだまだ 先だけど。お祖父様も とても喜んでいたから。俺 頑張るよ。」

みんなの心には お祖父様がいて 支えてくれていた。
 


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