シンフォニー ~樹
45

6月、絵里加は 元気な女の子を出産した。

とても安産で 母子共に健康で。

報せを聞いて 病院に駆け付けた樹と恭子。


絵里加にそっくりの 目の大きな赤ちゃんを 健吾が 抱いて離さない。
 
「お兄ちゃん、私にも抱かせてよ。」

と言う恭子に、
 
「落とすなよ。気をつけて抱けよ。」

と嫌々 抱かせる健吾。


その様子を 微笑んで見つめる絵里加は 母の顔だった。
 

「わあ。可愛い。絵里ちゃんに似ている。」

赤ちゃんを見て 歓声を上げる恭子。
 
「名前は決めたの?」と樹が聞くと、
 
「まだなんです。俺の案は 全部 絵里加に却下されて。」

と健吾は 不満気に言う。
 
「だってケンケン 読めないような 変な名前ばかり 言うんだもの。」

と絵里加が 頬を膨らます。

樹と恭子が笑うと、
 

「今ね、お父様にお願いして いくつか 候補を出してもらっているの。」

と絵里加は 健吾のご両親を尊重する。


絵里加も赤ちゃんも 間宮家だから。


それを 理解している絵里加に 樹は感心して 病院を後にした。
 


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